電話の保留音を聞きながら中年男は大きなため息をついた。二分前の自分の言葉を心の中で反復していた。電話の相手に浴びせた言葉はいらだちの中から産まれてきたもの以外の何物でもない。そしてそういう言葉は何人も幸せにしないことさえわかっているというのに。
「学習能力の無い奴だな」
吐き捨てるように男は独り言を言った。
やがて先ほどと違う若い男が電話に出た。腫れ物にさわるような言葉使いは中年男の気持ちを逆なでしつつも情報収集出来る可能性を感じさせた。
「車によっても違うかもしれませんが」と言うセオリー通りの前置きを言葉の頭に添えて若い男は説明を始めた。
ランフラットタイヤはホイールに専用の空気圧センサーが付いている。それ以外は普通のタイヤ・ホイールと何ら変わりが無いはずだということだ。パンクをしても走り続けられると言うことは、逆にパンクをしたことがドライバーにインフォメーションとして伝わりにくいと言うことになるのだ。パンクをしても走り続けられるタイヤはパンクをしても修理をしなくても良い訳ではない。
ホイールに特殊なセンサーが装備されている以外は一般のホイールと何ら変わりが無いと言うことは、ランフラットタイヤでなくても使用が可能であると言うことだ。ランフラットタイヤは空気が抜けた時にタイヤの形を保持するため「骨格」が硬く、構造が厚い為タイヤが重い。乗り心地にも難点があることも指摘されているため、一般のタイヤをつけることでメリットもあるとのことだった。
中年男は自分の持論の正しさに少しの幸せを感じていた。お客様の為に選択肢を用意し、よりメリットのある形で商品を提供する。そしてランフラットタイヤは普通のタイヤに比べて割高なのだ。
電話の若い男は的確な説明をしたし、疑問点も解決できた。なにも問題はない。しかしどこか引っかかるところがあった。若い男の話し方がまるで小学生に説明するかのように優しく、そして相手を傷つけないように否定をしないこともどこか不自然さを感じていた。
「ただ」
若い男はためらうように最後の言葉を付け加えた。
「ランフラットタイヤ装着の車にはスペアタイヤが乗っていませんので、パンクをしたら対処ができません。」
・・・・・・・・・ですよねぇ。すいません。僕が間違ってました(爆









































